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わが国の河川水のダイオキシン汚染は問題視する必要がある。
河川水中のダイオキシンの大半は浮遊懸濁粒子に吸着しているという報告が多い。
雨水による土壌粒子の混入や底質(堆積物)粒子の巻き上げなどにより、河川水の汚染濃度が大きく影響されることも指摘されている。
しかし、埼玉県五河川の調査結果では、高濃度の河川についてはSS量と汚染濃度の相関はみとめられていないことから、これらの河川ではかなりのダイオキシンが魚介類にとりこまれやすい溶存体として存在している可能性が強く、魚介類汚染が非常に懸念される。
おそらく、都市域の河川であるために、溶存体を増加させる洗剤などの界面活性剤が多いことが原因と考えられる。
一方、大阪府の調査結果では、上水源の淀川と大和川の汚染濃度は、埼玉県のデータよりもかなり低い。
海洋の水質についての調査データは皆無に近い。
私たちが一九九一年に大阪湾北港の海水について調査した結果では、比較的高い値をえている。
一般的に、海水中の環境汚染物質の濃度は経時的にかなり変動するために、その実態を把握するためには、長期的な観測データが必要となる。
二枚貝のムラサキイガイ(ムール貝)は定住性であり、世界中の海域に広く生息している。
そのために海洋汚染の適切な指標生物と考えられ、多数の環境汚染物質のモニタリングに利用されている。
私たちもこのムラサキイガイを用いて、日本各地の沿岸海域におけるダイオキシンの汚染実態を明らかにした。
ムラサキイガイ中のダイオキシン濃度は、最小値の沖縄県の〇・二と最大値の愛知県の九・九とのあいだで約五〇倍もちがいがあり、海洋汚染にいちじるしい地域差があることがわかる。
高濃度地域は愛知、大阪、神奈川、千葉であり、人口密度が高く、商工業活動のさかんな大都市沿岸域である。
逆に低濃度地域は、沖縄、高知、側の各地である。
この汚染傾向は大気汚染の場合と類似しており、汚染であることがさらにはっきりしてくる。
私たちは、人為的汚染の非常に少ない北海道利尻島に生息するムラサキイガイを大阪湾で飼育し、約四ヵ月後に蓄積濃度が最大に達し、その後は平衡状態になることを明らかにしている。
すなわち、とりこみ量と排出量が同じになるときが約四ヵ月後になり、このときの蓄積濃度が生息域の平均汚染濃度を反映するものと考えられる。
このような観点に立って、大阪湾北港の海洋汚染データを利用すると、わが国の沿岸域における海水中のダイオキシン濃度はほぼないものと推測される。
したがって、沿岸域は河川よりもかなり低い汚染傾向にあるものと考えられる。
河川と海洋の汚染は、重要な食料源である魚介類の汚染を引きおこすキーポイントとなるため、今後の早急な汚染実態の究明が必要である。
生物濃縮率の相違が、結果として大都市沿岸域の魚にコプラナーPCBの高濃度汚染をおこしている。
ムラサキイガイを指標とした汚染調査でも、大都市沿岸域はダイオキシン汚染が重度である。
そして、このような海域に生息する脂肪含量の多い魚に高濃度汚染がみとめられる。
これに該当する魚介類は、サッパ、コノシロ、イシモチ、ハマチ、サバ、アジ、スズキ、アナゴ、イワシ、ガザミ(ワタリガエ)などである。
とうぜんのことながら、これらの魚は、汚染度が軽度の海域で捕獲されたものは汚染度が低い。
一方、汚染度の低い魚としては、キハダマグロ、イサキ、ヒラメ、タイ、ポッケなどがある。
キハダマグロは遠洋魚であり、沿岸域に近づかないことが汚染の非常に低い理由である。
同じ理由から、サンマやカツオも汚染が軽度であると考えられる。
ダイオキシンは脂溶性であるために、脂肪含量の少ない魚介類は汚染が低い。
この例はヒラメ、タイ、イカにみられる。
タコ、カニ、エビ、キスなども同じである。
ただし、ガザミは汚染に抵抗性かおるために、汚染域で捕獲したものは濃度が高い。
とくに、カニみそ(正式には肝眸臓)は脂肪含量が高いために、高濃度化しやすい。
輸入魚介類の汚染が低い傾向にある。
ダイオキシン汚染は、世界的にみても人口密度が高く、商工業の活発な先進国で高い傾向がある。
一般的に輸人魚は先進国以外の産地のものが多いことが、汚染度の低い原因と思われる。
食肉中のダイオキシン濃度は、魚介類にくらべて低い傾向にある。
分析例は少ないが、コプラナーPCBを含めた合計濃度は○・○二〜〇・三三八である。
牛肉は豚肉や鶏肉よりも汚染度が高い傾向にある。
食肉牛の場合、放牧飼いが多く、牧草を主食とする食生活が他の動物よりも高濃度化する理由と思われる。
牧草は背が低いために土壌粒子が付着しやすく、また、大気中のダイオキシンを高度に濃縮するからである。
ニワトリは土壌を摂取する習慣かおるために、地飼いの場合には飼育期間が短いにもかかわらず、汚染濃度は高い。
近年の飼育形態はもっぱらゲージ飼いである。
しかし、汚染は豚肉をはるかに上まわっている。
理由としては、ニワトリの羽の熱湯抽出物であるフェザーミールや魚粉などを飼料として使うことによると考えられる。
牛乳および乳製品の分析データもきわめて少ないので、汚染実態は今後の調査にまたなければならない。
いままでのデータでは、牛乳中の濃度は比較的低い。
しかし近年、牛乳の摂取量が増加する傾向にあり、大きな汚染食品になる。
したがって、今後の調査が重要である。
スイスの放牧牛の場合、チーズの汚染濃度は明らかに牛乳よりも高い。
乳脂肪を主体とした製品であるため、牛乳中のダイオキシンが濃縮される結果、濃度が高くなる。
チーズも多食する傾向があるために、汚染実態の究明が必要である。
穀類、野菜、果実などにおいては、コマツナとホウレンソウを除けば、総魚介類、食肉などよりもかなり低い。
ニンジンを除く作物では、土壌中のダイオキシンは根部に濃縮されるが、根部から地上部はきわめて移行しにくい。
土壌からの気化率もきわめて低い。
したがって、土壌経由の汚染は飛散した土壌粒子が背の低い作物に付着することが主体となる。
作物へのダイオキシン汚染のルートは、光合成や呼吸作用にさいして、気孔から大量の大気をとりこむことによる大気経由が主体である。
しかし、果実、穀類、イモ類、トマト、ナスなどの実の部分へは、葉部で合成されたデンプンを主体とした成分は移行するが、ダイオキシンは移行しにくいために、このような食品の汚染度は低い。
また、米、トウモロコシ、豆類のように実に殻をつける植物の場合には、大気経由の汚染が制限されるために、一般的に汚染の受けにくい植物といえる。
コマツナとホウレンソウの濃度は、〇・一四四と〇・一八七であり、他の植物性食品にくらべていちじるしく高い。
この理由としては、すでに述べたように、葉部に大気経由のダイオキシンが高度に濃縮されること、およびダイオキシンとの結合性の強い葉緑素を多く含有することにある。
したがって、緑色の葉菜類は大気汚染に影響を受けやすい。
このような実態と葉菜類の摂取量の多いことを考慮すると、この種の作物の栽培地の近辺における発生源対策は非常に重要である。
ダイオキシンによる人体汚染は、主に脂肪組織、母乳、血液で調べられる。
脂肪ベースにすると、汚染濃度は各組織間で大差がないために、一般的に脂肪での濃度で汚染評価がおこなわれている。
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